【車両運動理論】タイヤ/伝達系/分析と最適化

今回は、車両運動理論講座の初回記事です。


【概要】

1.タイヤが重要

2.クルマは伝達系

3.理論を用いた課題の分析と最適化



1.クルマの3大機能とタイヤ



さっそくですが、クルマの3大機能はご存知でしょうか?


3大機能とは

①走る ②曲がる ③止まる の3つを指します。


では、それぞれの機能を使うために、

ドライバーはどんな操作をしますか?


①走る :アクセルを踏む→加速する

②曲がる:ステアリングを切る→曲がる

③止まる:ブレーキを踏む→減速する


う~ん、なんとも当たり前ですね…


では、それぞれの原理は説明できますでしょうか?


例えば…

①走る :アクセルを踏む→エンジントルクが増加→加速する


②曲がる:ステアリングを切る→タイヤに角度が付く→曲がる


③止まる:ブレーキを踏む→ブレーキが掛かる→減速する


うんうん。といった感じでしょうか?


実は、上流(ドライバー操作)から下流(車の運動)までの間には、

まだまだ書ききれていない要素が沢山あります!


その大きな要素が、タイヤです。


例えば、タイヤを正しく使わないとこんなことになります。


①走る :アクセルを踏む→エンジントルク増→…→タイヤが滑りすぎ加速しない!


②曲がる:ステアリングを切る→タイヤが切れる→…→タイヤが滑りすぎ曲がらない!


③止まる:ブレーキを踏む→ブレーキが掛かる→…→タイヤがロックし減速しない!


半ば答えありきで書いてしまいましたが、

タイヤが言うことを聞かないと、3大機能が発揮できないことになります!


それもそのはず、不動の地面を蹴って走るクルマにおいて、

地面と接触している唯一の部品がタイヤ

だからです。


モータースポーツを経験した方でも、特に

ブレーキングでタイヤが滑る感覚は中々捉えづらいのではないでしょうか。


この記事を書いている私は、ABSの無い車を扱っていた経験がありますが、

ブレーキング時のタイヤロックは、ABSの入った近代のクルマでは中々体験できませんし。


まして、モータースポーツ初心者の方は、いずれも想像が難しいと思います。


そこで思い出して頂きたいのが、自転車です。

全力でブレーキレバーを握るとタイヤがロックしますよね!あの感覚です。


子どものころは「何となくロックした方がよく効いていそう」

というイメージを私は抱いていました…皆様はいかがでしょうか?

しかし実際はタイヤの限界を超えた使い方の為、制動距離は伸びてしまいます。


ということで…よく言われることですが、車両運動理論の肝はタイヤです。

空力、サスペンション、ドライバーの操作ですら、タイヤの性能を引き出す為にあります。

(ということで、次回からはタイヤのお話が始まります)


直感的なイメージと合うこともあるし、合わないこともある…

それを理論で検証して、もっと速く走る為のヒントとしても使っていきましょう!



2.クルマの操作と伝達系



先ほど、クルマの3大機能を実現する原理について考えてみました。


その原理を上流(操作)から下流(車両運動)まで順に追ったものを、「伝達系」と呼びます。


小難しい名前ですが、制御工学から発生した用語です。


ここでは「プロセス」としてご理解頂いても問題ありません。


では、3大機能にどんな伝達系があるか、例を挙げてみます。

(長くなりすぎてしまうので、途中省略もあります…ご容赦ください)


①走る :アクセルを踏む→ECUで要求トルクを判断(制御)→要求トルクを満たすスロットル開度・点火・燃料噴射を制御→エンジントルクが増加→ギア・デフを伝達→タイヤにトルクが掛かる→タイヤの回転が加速する→路面とタイヤの滑りが増える→反力が増加する→加速する


②曲がる:ステアリングを切る→リンクが動く→タイヤに角度が付く→タイヤと路面に横滑りが発生→タイヤが抉れる/滑る→反力が発生する→曲がる


③止まる:ブレーキを踏む→油圧が高まる→パッド/ローター間で摩擦が発生→タイヤの回転が減速する→路面とタイヤの滑りが増える→反力が増加する→減速する


こんな感じでしょうか。


「タイヤが滑って加速する・曲がる・止まる。・・・あれ、滑らない方がいいんじゃなかったっけ?」


そう思わた方もいらっしゃるかもしれません。


この疑問はタイヤの性能に関する章で解消しますので、少しお待ち下さい。



さて、改めて上記伝達系を眺めると、上流(操作)から下流(車両運動)の間には、

目に見えないステップが結構あることがわかりますね。


では、いちいちドライバーが伝達系1つ1つを常に意識しているかというと・・・どうでしょうか?


「ステアリングを〇度切ると→〇〇mmシャフトが動いて→〇〇度タイヤが切れて

→だからタイヤは〇Nの力を発生して…」

運転中にそんな計算、誰もしませんよね。


操作と車両運動の関係を頭と身体で覚えているため、


実際は1つ1つの伝達を纏めて「クルマ」(=「系」)として覚えることで、

このクルマは「こう操作したらこう動く」という感じで、細かな伝達を意識せずとも

大雑把には運転できてしまいます。


ただ、ここに車両運動理論をトッピングすることで、メリットが生じます。

そのメリットとは…「課題の分析と最適化」です。



3.車両運動理論の使い道~課題の分析と最適化~


(例)「コーナーで曲がらない」と感じた場合

 

上流は「ステアリングを切る」→下流は「曲がらない」となります。


 コーナーで思ったように曲がらない理由は幾つも推定できます。

(路面が逆勾配/μが低い/荷重移動不足/フロントタイヤの過負荷 など)


このケースでは、1つまたは複数の理由で理想とは異なる挙動を生じている為、伝達系をよく観察して、課題を特定する必要があります。


「こう操作したらこう動く」のパターンが、状況に応じて沢山あるからです。


もし操作が課題の場合は正しい操作を考え、操作を変えることで車両運動を改善します。


伝達系が課題の場合は伝達系(=セッティング)を変えることで車両運動を改善します。


いずれにおいても、課題の特定と改善方法を考える為に伝達系(=車両運動理論)の理解が必要となります。


さて、このメリットを得るため、プロのレースでもエンジニアが活躍しています。


余談ですがレーシングドライバーは

①身体のセンサーが優れ ②操作精度が高いことで→「伝達系を高速で理解する」

と考えられます。


①挙動を正確に捉え→②高精度・短時間で再現検証し→多くのパターンを短時間で覚える

という表現もできるかと思います。


ただし、ドライバーは伝達系(クルマ)の中で何が起こっているかはわかりませんから、

操作と車両運動の関係を知っていることが唯一の武器になります。


ここで登場するのが車両運動理論とエンジニアです。

・ドライバーが試せていないクルマの使い方が残されていないか

・伝達系の変更でタイム短縮できる余地があるか


これら全てを試すには時間も足りず、リスクも伴います。


そこで「走らなくても、頭で考えられることは頭で考えましょう」


ということでエンジニア達の仕事があるわけですね。


さて、今回のまとめです。


【まとめ】

・タイヤがクルマを動かす末端の存在(重要!)

・クルマの伝達系を理解すると↓

・課題の分析と最適化ができるようになる!


次回からは重要な「タイヤ」についてお伝え致します。

ご覧頂きありがとうございました。


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