エンジンブレーキ

最終更新: 2019年5月12日

唐突ですが、今回はエンジンブレーキについて書きます。

SNS上でこのテーマが盛り上がっているのを見かけたことが理由です。


クルマ界隈、技術的事象に対していろいろな解釈がある様ですが、

技術屋さんでない方含め、全員に納得してもらえる説明は中々難しいですよね。


私共も日々痛感しています…


今回は読んでいただいた皆様に納得していただける記事が書けるよう頑張ります。

くどいと思われた場所は、是非読み飛ばしてください。



<エンジンブレーキの発生源>


まずは、エンジンブレーキの発生源についてです。

スロットルオフ時を考えてみましょう。


クラッチを切ると、エンジンブレーキは効かなくなります。

この際に減速する主な理由は空気抵抗と、タイヤの転がり抵抗です。


一方、クラッチが繋がっていると、減速力は大きくなります。

そして、この減速力をエンジンブレーキと呼びます。


クラッチを切った時との違いは、

クラッチからエンジン側が繋がっているか否かですね。


つまり、クラッチからエンジン側の範囲がエンジンブレーキの発生源です。

そして、この範囲で最も大きな抵抗は、エンジンの吸気損失(ポンピングロス)です。



<吸気損失?>


吸気損失とは、エンジンが空気を吸って吐く時に生じる損失です。

空気を吸うときにピストン面に負圧で抵抗が生じ、吐くときにも圧力抵抗が生じます。


さて、ここで考えたいのは、エンジン回転数と吸気損失の関係です。

ピストン面の圧力抵抗は、


抵抗F[N:ニュートン] = P[Pa:パスカル]×S[m^2:平方メートル]で書けます。


要は、力です。

さてこのF[N]に、ピストンの移動距離[m]を掛けた値が、エネルギーE[J:ジュール]です。


このEにエンジン回転数R[/min.]を掛けると、1分辺りのエネルギー量が出ます。

(正確には、上下動回数分の係数を掛けますが、ややこしいので省略します)


こんな方法で計算すると、1秒あたりの吸気損失エネルギー[W:ワット]が求まります。

ちょっとほっとする、電気でお馴染みの単位ですね。


さて、回転数が高いほど何度も空気を吸って吐いてするので、

1秒間の損失回数が多い=損失エネルギーが大きいことがわかりました。


ちなみに、そもそも高速で吸って吐いてを繰り返すと、

空気の摩擦力が高まり、圧力抵抗自体も大きくなりがちです。


ということで、

高回転ほどエネルギーとしてのエンジンブレーキは大きいと言えます。


また、高回転ほど圧力抵抗も高まり、力としてのエンジンブレーキも大きいと言えます。



<ここが勘違いのポイント?>


エンジン回転数が高いほどエンジンブレーキが大きい

→ブリッピングして回転数を上げると、エンジンブレーキが強まる


これ、不思議なロジックで、恐らく勘違いパターンです。


エンジンブレーキが強まるのは、

回転数が高い『&アクセルオフ』時です。


ブリッピングするということは、

クラッチを踏んでいる間に一瞬だけ吸気抵抗を取り除き、回転数を上ることです。

真の目的は、タイヤとエンジンの回転数をリンクさせることにあります。



<回転数合わせ?>


そもそものギア(ミッション)の役割に遡ります。

だんだんと話が膨らんできてしまいました。


加速中、エンジンは0~せいぜい9000RPMの間を往復します。

その間に、車速は上がる一方です。


なぜエンジン回転数と車速がリンクしないかというと、

回転数の比率を変換するギアが噛んでいるからです。


今度は、シフトダウン時を考えます。

減速中するとエンジン回転数が落ちます。

この際、エンジンはアイドリング下限以下では動作できない(エンストする)ので、

シフトダウンします。


すると、エンジン回転数が上がります。


この時何が起きるかと言うと、

今まで低回転だったエンジン回転数が上がります。

スロットルオフだと、殆どエネルギーを与えていないのにエンジン回転数が上がる

つまり、エンジンに急激にエネルギーが供給されていることになりますね。


つまり、シフトダウン後のギアで本来損失するはずのエネルギー

にプラスして、急激にエンジン回転数を上昇させるエネルギーが損失される訳です。


このエネルギーの供給源は、回転中の駆動輪です。


駆動輪が路面からの反力(減速力)を受けて、エンジンを回しにいく状態が発生します。

その力が駆動輪を止めようとし、回転数が下がり、ついには限界スリップ率を超えたところでリアタイヤがロックモードに入ります。


これが、ブリッピングせずにシフトダウンすると駆動輪がロックしやすい理由です。

ロックに至らなくても、駆動輪側の挙動が不安定になるのも、同じ理由です。


一瞬減速度が増えるのでピッチングも増加しますが、主要因はスリップ率の変動です。


※補足1 ブリッピングしてもエンジンブレーキが大きいと(1速など)、

     駆動輪の挙動は不安定になりがちです。


※補足2 エンジンが同じ回転数で同じ作動状態なら、

     低速の方がエンジンブレーキは強いです。

     低速の方が加速力が強いことの裏返しです。



<エンジンブレーキのメリット?>


いちいち回転数合わせるの面倒だし、エンブレ使わなければいいじゃん。

と思う方もいらっしゃいますよね。でもメリットはあります。


例1.ブレーキ負荷の低減

   ただし、多かれ少なかれエンジン負荷は増えます。


例2.ブレーキバランスの疑似調整

   減速中のブレーキバランスに影響します。

   後輪駆動車でブレーキング中にクラッチを切りっぱなしの場合、

   かなり前寄りのブレーキバランスになります。

   一方、シフトダウン併用の場合、後輪に減速力が上乗せされるため、

   上記よりはリアよりのブレーキバランスになります。

   また、任意のタイミングでシフトダウンを併用することで、

   疑似的にブレーキバランスを調整できます


間違い例.リアが沈むのでリアに荷重が残る

     何でこんな間違いが出るのかあまりわかりませんが…

     リアが沈んだ分の反力は、サスペンションメンバーを経由して

     タイヤを持ち上げようとしています

     つまり、厳密にはリア荷重は想像よりも残っていません。

     リア荷重が残った感覚(先入観)により、

     落ち着いてコーナーに侵入できるパターンでしょうか。



ざっと書きましたが、疑問点、ご意見ありましたら是非お問い合わせください。


最後までお読みいただき、ありがとうございました!

67回の閲覧
  • Facebookの社会的なアイコン
  • YouTubeの
  • さえずり

© 2018 Motorsport Lab.